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象使いの話

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今回私が行ったのはエレファントホーム(Thai Elephant Home)という象キャンプです。
このキャンプのオーナーのサティアンさんは
象と人が自然に暮らせることを考えてこのキャンプを作ったそうです。

タイの象には1頭ごとに登録書があり、
持ち主が変わる時には役場に届け出を出すことが義務付けられています。
野生の象や未登録の象もいるので、
正確な頭数は分かりませんが、
サティアンさんの話によると、20年前は1万頭いたのが、
現在は森林の減少と共に3000頭に激減しているそうです。
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登録された象が一番多いのは、
イサーン(東北タイ)のスリン県だそうです。
でも、普段はほとんどの象が仕事を求めて県外に出ていて、スリンにはいないそうです。


エレファントホームがあるメーテーン地区は、
チェンマイの中でも、とりわけ多くの象がいる場所です。
象キャンプだけでも20カ所、250~300頭の象が働いています。

それは、メーテーン地区には6つの山岳民族村や、
メーテーン川の筏下りやトレッキングなどの観光スポットが集中し、
多くの宿泊施設があるから。

昔は、森で木材の切り出しなどに飼われていた象ですが、
森林伐採が禁止され、象も象使いも生活の場を失いました。
今は象の観光産業で働くことが象の仕事の主流になっています。
エレファントキャンプがあるメーテーン地区には、そんな象たちが
スリン県、ランパーン県、プレー県、ターク県、メーホーンソーン県などから、
象使いと共に集まっています。


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                              象は一生成長し続けるそうです。年配象ほど大きい

象は大きく分けると、アフリカ象、アジア象の2種類があり、タイに生息するのはアジア象です。

象1頭につき1人の象使いがついて、生活を共にします。
象の寿命は人間と同じくらいで、
途中で持ち主が変わることもあります。




北タイでは、以前にも紹介した森で暮らすカレン族の象使いが多いのが特徴です。
エレファントホームの象使いもほとんどがカレン族の人です。
その象使い達の中で最も信頼されている象使いがブーンさんです。

バイヤーの経験もあり、
「象のことならなんでもわかる人」です。
他の象キャンプであっても、病気になった象が出ると、
ブーンさんに連絡が入るんですって。
 
このブーンさんにも、いろいろとお話を聞きました。

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                                         ブーンさん


「私はチェンマイ県メーチェム郡にあるカレン族の村の出身です。
象使いになったのは13歳の時。
もともと父が飼っていた大きな象を受け継いだのが最初です。

カレン族は、昔、森の中で象を放し飼いにして、
切り出した木材を運ぶ時などに象を使っていたんですよ。
今はショーや、お客さんを乗せて歩く象タクシーなど、観光客向けの仕事をするのが普通です。
昔は子象が3~4歳になるとしつけを始めましたが、
今はショーの仕事があるので、1歳からしつけをします。

カレン族の象使いは、
母親象と子象を離す時に特別な儀式をします。

それは、呪文を吹き込んだサ2本のトウキビを母象と小象に1本ずつ与え、
魂が抜けだして会いに行ってしまわないように
体に結び止める儀式です。

これをやらないと、将来、お互いが恋しがって、
寂しさのあまり死んでしまうことがある、という言い伝えがあるためです。

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象が病気になれば治療もします。
本来、象はおなかの調子が悪い時などは
土を食べたり、森の中で薬効成分のある木の皮を自分で探して食べたりするものなんですよ。

でも、昔と違って、今は象が自由に森の中を歩ける環境ではありません。
それでいろいろなハーブを調合して作った薬を作って食べさせます。
しかし症状が重い時は、象専門の獣医師のいるランパーンの象病院に連れていきます。

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一人前の象使いになるには、多くの経験を積むことが必要ですね。
象は本来心優しい動物ですが、
想像もつかないことが起きうるので油断はできません。
象はとても臆病ですから、
犬や鶏にさえ怯えて、コントロールが利かなくなることもあるんです。
 
1度こんなことがありました。

象タクシーで数十頭の象にお客を乗せて車道へ出たところ、
なんと、たまたま通りかかった車が目の前でパンクして、
その大きな音に象達が驚いて、一斉に走り出してしまったのです。

体の大きな象がパニックを起こして走り出すと非常に危険です。
その時は数頭がお客を乗せたまま、遠くまで逃げてしまって大変でした。
 

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象は1頭ごとに顔も性格も違います。
聞き分けのいい象は飼うのも楽ですが、
そうではない象は、時には叩いて教えることも重要です。
しつけができていないせいで
象が勝手に近所の農家の畑に入り
農薬を食べて死んでしまったこともありました。


象使いは、自分よりもずっと体が大きく力が強い象を操るために、
「タコー」という調教俸とナイフ(ナタ)をいつも身につけて、
いざというときはこれを使って解決しなければいけない、という緊張感をいつも持っています。
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象がいうことを聞かない時、最初は柄でたたき、それでも聞かない時はカマの背で叩く。
それでもダメならカマの部分でひっかけるようしていうことをきかせる。



タコーを使うことについて、動物愛護の立場からは批判を受けることもありますが、
私は象使いにとって必需品だと思っています。
子供の頃から家族として面倒をみているなら別ですが、
昔、森に放した半野生の象を捕まえて働かせていた頃には、
これがなければ像を操ることは不可能でした。
そして、時には他人の象に
乗らなければいけないこともあります。


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以前、私は日本の観光用象キャンプから招待を受け、
象使いとして働いた経験があります。
その象舎では各象の担当の象使いしか
調教俸をもつことが許されていませんでした。

しかし、それでは象使いと象との主従関係を保つことができず、
象使いは危険にさらされます。

象は芸を覚えるほど賢くなっていきます。
後ろ脚2本で立つ芸を教えた象に、
調教俸を持たない象使いが乗った時、
象はわざと2本足で立ちあがって象使いを振り落とそうとしたことがありました。
象が2本脚で立ちあがると、相当な高さになり、
運が悪ければ、象使いは命を落とすこともあります。

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また、雄の象は、発情期に「トックマン」という興奮状態になることがあり、
長年信頼関係を築いてきた象使いでも
言うことをきかなくなることもあります。

自然界の中で、雄同士が戦うのに必要な生理現象なのでしょうが、
トックマンになった象は本当に危険で、
その時期が過ぎるまで、離れた所に木に繋ぐなどして特別の注意が必要です。
だから象キャンプで飼われているのは雌の象が多いんですよ。

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いい象使いになるには、
動きも判断も俊敏であることと、
それから、強い責任感が求められます。

象は1日くらいなら、水を飲まなくても平気ですが、
1日でも餌を食べないと、その大きな体を維持することができません。
以前私が働いていた象キャンプでは、
酔っ払って餌やりをおろそかにするいい加減な象使いがいて、
私が代わりにエサをやることもありました。
人間の気まぐれで餌やりをさぼるわけにはいかないのです。


そして、何より象が好きであることは、いうまでもありませんね。


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街に行くと象を連れて、レストランや飲み屋のお客に餌を売り歩く象使いをみかけることがあります。
あれはスリン県から来た象で、
チェンマイの郊外に住んでいて、夜になると街に出るようです。
象キャンプで働くよりも儲かる商売ですが、違法です。

だから、彼らは見つかった時に隠れやすいよう、子象を使います。
時々、私のところにも子象を貸し出してくれないかという相談がありますが、私は貸しません。
儲かる商売なのでしょうが、象は幸せではないでしょうから。
カレン族の象使いは誰もやりませんね。

象使いは毎日象の世話をしますが、
象がいるからこそ暮らしていけるのです。
もし象がいなければ、
ほとんどの象使いは、野良仕事か日雇いの重労働でしか
生きていく道はありませんからね。
象使いにとって象は大切な家族の一員なんですよ」


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Elefant home
http://thaielephanthome.com
elephanthome@hotmail.co.jp


Commented by 417mariyo at 2012-03-26 19:00
日本では象といえば、動物園でしか見られない動物と思っていましたが
タイでは一般の人が飼っているんですね。
タイの友達から象のストラップやタペストリーみたいな物をいただいたことがありますが、
生活の中に密着した家族のようになっているんですね。
ブーンさんのお話には色々考えさせられます。
でも象使いとしてしっかりした考えを持ち訓練されて誇りを持って
ご自分の仕事をされているのですね。応援したいです♪
Commented by yunkao at 2012-03-27 01:00
417mariyoさん
やはり、象キャンプなどで仕事がなければ象を飼うことは難しいようです。
誰でも簡単に象を飼えるわけではありませんが、タイの昔の旗は白い象の柄ですし、タイの人は象が好きですね。
ただ、それと、象にとって良い環境を真剣に考えるのこととは、あまり結びついていないようです。
象も人も幸せに暮らせるよう、森林などの自然を保護していかなければいけないのだと思います。
ブーンさんは34歳、まだまだこれからも象使いのリーダーとして活躍されると思います^^
Commented by lunta at 2012-03-27 01:09 x
ブーンさんのお話、すばらしいですね。
象使いの責任感と誇りが感じられて、こういう人に世話されている象なら安心で幸せでしょう。
象さんの後ろ姿の写真も素敵です。
Commented by yunkao at 2012-03-27 10:33
luntaさん
エレファントホームの日本人スタッフの方によると、
それぞれの時期にそれぞれの楽しみ方があるそうです。
泥遊びは川を渡らないといけないので、雨季の8月中旬から3ヶ月位は増水するためできないそうです。そのかわりに、象に乗っている時間がより多いコースを行き、小さな川で水浴びもします。
今年は乾季に水温が例年より下がったためか、2-3週間位は象が水浴びを嫌がったそうですが、普段はそんなことはないそうです。3月頭から中旬頃は山火事があるのでできないことが多いですが、象と一緒に森の中で泊まることもできるそうです。
スタッフのなおさんは象に詳しくとても親切に説明してくださるので安心です。最後の写真は彼女に撮ってもらいました。
ブーンさんの仕事も見てきてくださいね。
ほかのアクティビティーよりは値段が張りますが、一生の思い出になると思います!
Commented by ユッキー at 2012-03-28 04:23 x
そういえば、象のしっぽの毛で作った「指輪」を、持っていますよ。ホアヒンで「エレファントビレッジ」をやってた彼から、もらいました。しあわせを運ぶ指輪だそうです。ね。乗ってみると、意外と高いって聞きますよね。高いとこが苦手なわたしは、まだ、乗ってないんです。スリン県生まれのプアンと、今日あうので、このお話を、聞かせたいと思います。ありがとう。
Commented by yunkao at 2012-03-28 11:08
ユッキーさん
象のしっぽの毛の指輪をもっているんですね。カレンの人は、魔除けのお守りとして子供に持たせたりするそうです。私も持ってます^^スリン県のお友達は象使いさんなんですか?私も高いところが怖いですが、なんとかなったので、大丈夫ですよ。いつかぜひ象に乗ってみてくださいね。
Commented by colargol at 2012-03-29 04:33
こんにちは!。去年アユタヤのエレファントキャンプで初めて象に乗ったのでとても興味深く読ませて頂きました。鼻を伸ばしてチップをねだる象(もちろん象使いの指示ですが)や象使いの言う事を良く聞いて長いことポージングする子象に驚いたものです。印象深かったのは、象使いさんの休憩時間なんでしょう、ベンチで仮眠していた男性の側で「早く起きてよ」とでも言ってるかのように彼をじっと見つめて寄り添っていた子象の姿。私も象にこんなに懐かれてみたい!と思いました。
象の数が減っているなんて悲しいですね。こないだもアフリカ?のどこかで象牙のために違法に象が大量殺戮された記事を読んでとても悲しくなりました。タイでもこんな事決して起きて欲しくないです。
Commented by yunkao at 2012-03-29 10:22
colargolさん
アユタヤで象に乗ったんですね^^ 象の賢さには本当に驚かされます。そして、子象のかわいらしさは格別ですよね。
タイでも割と最近、象牙をとるために象が殺された事件が報道されていました。また、象のしっぽの毛で作った指輪が売れるため、尻尾を切り取る盗人がいるので、象使いの中には予め象の尻尾を切っておく人もいるのだと聞き、やはりとても悲しかったです・・・。でも、このキャンプでは、どの象さんも長くて立派なしっぽでペチペチと虫を払っていました。キャンプのお客さんはほとんど外国人ですが、タイの人ももっと本物の象に触れる機会があるといいのになと思います。
Commented by t-haruno-2 at 2012-03-29 14:52
像つかいの方のお話、プロフェッショナルでとても素晴らしいですね。
動物愛護団体から、色々言われるのはしんどいことと思いますが
賢く社会性がある生き物でも、あの体格では「猛獣」の範囲。
プロのわきまえは、絶対に必要ですよね。

前の「煙害」の記事。日本のマスコミは取り上げていませんよね。
こんな事態になっているとは。
あそこで書かれていた「焼き畑」は、もちろん、以前取り上げてらした伝統的なやり方の焼き畑では無いのでしょう?
自然を利用する時、欲がからむと、本当に人間は暴走してしまう・・・・・・。
他人事ではないです。もし、中国が日本の森林の木材を高値でどんどん買うと言い出したら・・・・・・
多分、日本の山々はあっと言う間に丸裸になってしまうでしょうから。
考えさせられます。
Commented by yunkao at 2012-03-29 18:03
t-haruno-2さん
「煙害」ですが、チェンマイの状況は最近大分よくなりました。でも、根本的な問題解決がされているわけではないようです。
今まで農業用地確保でこのような煙害が起きていると思っていたのですが、詳しい方に聞いたところ、エネルギー問題が原因らしいです。タイでは石油が高くなったころから、代替エネルギーとしてガスホールというトウモロコシなどから取れる植物油を原料とした燃料を生産消費しています。北部の山林も、表からはあまり見えないところで、それ用の農地がどんどん開発され、焼き畑が行われているそうです。経済に大きく関わることだからなのでしょうか、タイ国内でもそのことに対する報道はありません。とはいえ、私も普段のバイクにはこの安いガスホールを使っているので、ガススタンドに行く度に後ろめたく感じます。タイは天然ガスなどのエネルギー資源が豊富にとれる国なのだそうですが、それは国内ではあまり使われていないという話もあります。
Commented by yunkao at 2012-03-29 18:04
t-haruno-2さん(つづき)
この前に紹介したカレン族の焼き畑は、まだこの時期は始まっていません。焼き畑をして、すぐその後に雨が降ると栄養の効率が良いので、その時期までは焼かないのですが、4月に入って村人が焼き畑を始めると今までの煙害の責任を負わされる、という可哀そうな現状です。
「欲」の問題はタイの仏教でもいつも教えていることですが、大昔から簡単に解決できない問題なのですね・・・。
日本もタイも、街の人が、特に将来を担う子供たちが象使いや農業体験などで、少しでも自然を相手にする経験ができれば、世の中が変わっていくのかもしれないですね・・・。
by yunkao | 2012-03-27 11:01 | ちょっと遠くへ | Comments(11)

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