2010年 05月 23日
ピー(霊)の踊り
先日、紙細工職人のノパドンさんに呼ばれて
奥さんの本家で行われた儀式に行ってきました。
これは5年に一度、先祖の霊が降霊する
「フォンピー・プーヤー・モット・メン」という儀式で、
フォンピー(霊の踊り)とは、
人に祖先の霊がのり移って踊る、一風変わった踊りのことです。
まず、豚の頭やお菓子などのお供え物と、
ソーという楽団の即興の唄によって祖先の霊が迎えられますが、
唄の途中で、いきなりこの家の長女が倒れました。
そして、どことなく男性っぽい雰囲気に変貌。
いつもは、吸わないタバコをおいしそうにパカパカ吸い出しました。
このおばさんを皮切りに、
次々と女性たちに祖先の霊が憑依していきます。
写真を撮っていると横にいたおばあさんに
「あんた、そこ邪魔!」と注意され、
あわてて場所を移動したとたん、
そのおばあさんは立ち上がり、
「マー・レーオウォーイ!(やってきたよ~!)」と叫びながら、
激しく踊りだしました。
・・・なるほど、踊るのに邪魔だったんですね。すみません。
敷地内に設営された
フォンピー(霊の踊り)のためスペースで
チャルメラのような管楽器がリードする賑やかな音楽が鳴り響く中、
女性達に次々と霊がのり移り、激しく踊ります!
女性達は天井からぶら下がった赤い布にしがみつき、
身体を委ねることで、
霊が乗り移るんですって。
霊の踊りといっても、
外から見る分には賑やかで楽しいので、
親戚だけでなく、近所の人も見にきます。
ノパドンさんの奥さんのウイさん(右から2番目の女性)は、
「踊っている時、本人の魂はどこに行っちゃうんだろうね。
後で本家のおばさんに聞いてみよう~」と、興味津々。
すると、そのトランス状態のおばさんが、
いきなりウイさんの手を引っ張って、赤い布の所に連れて行きました!
(その様子を写真に撮ろうとしたのですが、
なぜかシャッターが下りず・・・)
ウイさんの頭に布が被せられ、
何度か大きく揺さぶられると、
なんと、ウイさんもトランス状態に…。
そして、一言はっきりと、
「ミヤンが食べたい」。
ミヤンとは、醗酵させたお茶の葉で、
北タイの人たちが食後に好んで食べる伝統的な嗜好品。
今でも田舎の人やお年よりはミヤンが好きですが、
若い世代の人たちはもう食べません。
ウイさんもミヤンを食べる習慣はなかったはず・・・。
ミヤンを口にすると、ほっとした様子で、
おいしそうに食べていました。
この家の近くに
土地の神様を祀った祠があるそうですが、
ウイさんに降りているのは、
そこから来た霊だそうです。
あっ!
霊同士が、会話をしています・・・。
真ん中でお世話をしているのはノパドンさんです。
残念ながら、何を話しているのか全部は分かりませんでしたが、
「わしゃ~、踊る気力がないのよ」と、土地の神様が言っているのが聞こえました。
やや、お疲れ気味でしょうか。
それから、ノパドンさんに宝くじの当選番号を伝えていました(笑)。
タイでは人が亡くなると、
その霊が当選番号を告げに来るとよくいわれます。
家族愛ですね?
私はウイさんの手を握りながら、
その変貌振りを目の当たりにして、さすがにビックリ。
ウイさんにとっても、生まれて初めての体験だったそうです。
後で彼女に
「霊が入っている間、あなたはどこにいたの?」と聞いてみると、
「起きていることは、少しは分かるんだよ。
自分もそこにいるんだけど、
自分じゃない誰かが入っている感じ」
と言っていました。
分かるような、分からないような・・・
この日、儀式の進行などを仕切っていたノパドンさんは、
奥さんの変貌ぶりを見ても、とっても冷静。
奥さんの身体に入った霊に対して、あたたかく語りかけ、
ココナッツジュースを飲ませたり、
聖水をかけたりして、精一杯のおもてなしをしていました。
まだ30代前半のノパドンさんご夫婦ですが、
北タイの人は霊の世界を信じ、身近に感じているんですね。
式の途中で帰る準備をしていたら、ノパドンさんに
「もう帰るの? 霊がのり移ってからにしたら?」と言われました(苦笑)