みちくさチェンマイ

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2012年 03月 27日

象使いの話

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今回私が行ったのはエレファントホーム(Thai Elephant Home)という象キャンプです。
このキャンプのオーナーのサティアンさんは
象と人が自然に暮らせることを考えてこのキャンプを作ったそうです。

タイの象には1頭ごとに登録書があり、
持ち主が変わる時には役場に届け出を出すことが義務付けられています。
野生の象や未登録の象もいるので、
正確な頭数は分かりませんが、
サティアンさんの話によると、20年前は1万頭いたのが、
現在は森林の減少と共に3000頭に激減しているそうです。
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登録された象が一番多いのは、
イサーン(東北タイ)のスリン県だそうです。
でも、普段はほとんどの象が仕事を求めて県外に出ていて、スリンにはいないそうです。


エレファントホームがあるメーテーン地区は、
チェンマイの中でも、とりわけ多くの象がいる場所です。
象キャンプだけでも20カ所、250~300頭の象が働いています。

それは、メーテーン地区には6つの山岳民族村や、
メーテーン川の筏下りやトレッキングなどの観光スポットが集中し、
多くの宿泊施設があるから。

昔は、森で木材の切り出しなどに飼われていた象ですが、
森林伐採が禁止され、象も象使いも生活の場を失いました。
今は象の観光産業で働くことが象の仕事の主流になっています。
エレファントキャンプがあるメーテーン地区には、そんな象たちが
スリン県、ランパーン県、プレー県、ターク県、メーホーンソーン県などから、
象使いと共に集まっています。


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                              象は一生成長し続けるそうです。年配象ほど大きい

象は大きく分けると、アフリカ象、アジア象の2種類があり、タイに生息するのはアジア象です。

象1頭につき1人の象使いがついて、生活を共にします。
象の寿命は人間と同じくらいで、
途中で持ち主が変わることもあります。




北タイでは、以前にも紹介した森で暮らすカレン族の象使いが多いのが特徴です。
エレファントホームの象使いもほとんどがカレン族の人です。
その象使い達の中で最も信頼されている象使いがブーンさんです。

バイヤーの経験もあり、
「象のことならなんでもわかる人」です。
他の象キャンプであっても、病気になった象が出ると、
ブーンさんに連絡が入るんですって。
 
このブーンさんにも、いろいろとお話を聞きました。

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                                         ブーンさん


「私はチェンマイ県メーチェム郡にあるカレン族の村の出身です。
象使いになったのは13歳の時。
もともと父が飼っていた大きな象を受け継いだのが最初です。

カレン族は、昔、森の中で象を放し飼いにして、
切り出した木材を運ぶ時などに象を使っていたんですよ。
今はショーや、お客さんを乗せて歩く象タクシーなど、観光客向けの仕事をするのが普通です。
昔は子象が3~4歳になるとしつけを始めましたが、
今はショーの仕事があるので、1歳からしつけをします。

カレン族の象使いは、
母親象と子象を離す時に特別な儀式をします。

それは、呪文を吹き込んだサ2本のトウキビを母象と小象に1本ずつ与え、
魂が抜けだして会いに行ってしまわないように
体に結び止める儀式です。

これをやらないと、将来、お互いが恋しがって、
寂しさのあまり死んでしまうことがある、という言い伝えがあるためです。

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象が病気になれば治療もします。
本来、象はおなかの調子が悪い時などは
土を食べたり、森の中で薬効成分のある木の皮を自分で探して食べたりするものなんですよ。

でも、昔と違って、今は象が自由に森の中を歩ける環境ではありません。
それでいろいろなハーブを調合して作った薬を作って食べさせます。
しかし症状が重い時は、象専門の獣医師のいるランパーンの象病院に連れていきます。

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一人前の象使いになるには、多くの経験を積むことが必要ですね。
象は本来心優しい動物ですが、
想像もつかないことが起きうるので油断はできません。
象はとても臆病ですから、
犬や鶏にさえ怯えて、コントロールが利かなくなることもあるんです。
 
1度こんなことがありました。

象タクシーで数十頭の象にお客を乗せて車道へ出たところ、
なんと、たまたま通りかかった車が目の前でパンクして、
その大きな音に象達が驚いて、一斉に走り出してしまったのです。

体の大きな象がパニックを起こして走り出すと非常に危険です。
その時は数頭がお客を乗せたまま、遠くまで逃げてしまって大変でした。
 

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象は1頭ごとに顔も性格も違います。
聞き分けのいい象は飼うのも楽ですが、
そうではない象は、時には叩いて教えることも重要です。
しつけができていないせいで
象が勝手に近所の農家の畑に入り
農薬を食べて死んでしまったこともありました。


象使いは、自分よりもずっと体が大きく力が強い象を操るために、
「タコー」という調教俸とナイフ(ナタ)をいつも身につけて、
いざというときはこれを使って解決しなければいけない、という緊張感をいつも持っています。
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象がいうことを聞かない時、最初は柄でたたき、それでも聞かない時はカマの背で叩く。
それでもダメならカマの部分でひっかけるようしていうことをきかせる。



タコーを使うことについて、動物愛護の立場からは批判を受けることもありますが、
私は象使いにとって必需品だと思っています。
子供の頃から家族として面倒をみているなら別ですが、
昔、森に放した半野生の象を捕まえて働かせていた頃には、
これがなければ像を操ることは不可能でした。
そして、時には他人の象に
乗らなければいけないこともあります。


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以前、私は日本の観光用象キャンプから招待を受け、
象使いとして働いた経験があります。
その象舎では各象の担当の象使いしか
調教俸をもつことが許されていませんでした。

しかし、それでは象使いと象との主従関係を保つことができず、
象使いは危険にさらされます。

象は芸を覚えるほど賢くなっていきます。
後ろ脚2本で立つ芸を教えた象に、
調教俸を持たない象使いが乗った時、
象はわざと2本足で立ちあがって象使いを振り落とそうとしたことがありました。
象が2本脚で立ちあがると、相当な高さになり、
運が悪ければ、象使いは命を落とすこともあります。

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また、雄の象は、発情期に「トックマン」という興奮状態になることがあり、
長年信頼関係を築いてきた象使いでも
言うことをきかなくなることもあります。

自然界の中で、雄同士が戦うのに必要な生理現象なのでしょうが、
トックマンになった象は本当に危険で、
その時期が過ぎるまで、離れた所に木に繋ぐなどして特別の注意が必要です。
だから象キャンプで飼われているのは雌の象が多いんですよ。

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いい象使いになるには、
動きも判断も俊敏であることと、
それから、強い責任感が求められます。

象は1日くらいなら、水を飲まなくても平気ですが、
1日でも餌を食べないと、その大きな体を維持することができません。
以前私が働いていた象キャンプでは、
酔っ払って餌やりをおろそかにするいい加減な象使いがいて、
私が代わりにエサをやることもありました。
人間の気まぐれで餌やりをさぼるわけにはいかないのです。


そして、何より象が好きであることは、いうまでもありませんね。


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街に行くと象を連れて、レストランや飲み屋のお客に餌を売り歩く象使いをみかけることがあります。
あれはスリン県から来た象で、
チェンマイの郊外に住んでいて、夜になると街に出るようです。
象キャンプで働くよりも儲かる商売ですが、違法です。

だから、彼らは見つかった時に隠れやすいよう、子象を使います。
時々、私のところにも子象を貸し出してくれないかという相談がありますが、私は貸しません。
儲かる商売なのでしょうが、象は幸せではないでしょうから。
カレン族の象使いは誰もやりませんね。

象使いは毎日象の世話をしますが、
象がいるからこそ暮らしていけるのです。
もし象がいなければ、
ほとんどの象使いは、野良仕事か日雇いの重労働でしか
生きていく道はありませんからね。
象使いにとって象は大切な家族の一員なんですよ」


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Elefant home
http://thaielephanthome.com
elephanthome@hotmail.co.jp


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by yunkao | 2012-03-27 11:01 | ちょっと遠くへ


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