みちくさチェンマイ

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2012年 01月 29日

森と生きる ④森の民パガヨーの抱える問題 วิถีชีวิตปกาเก่อญอ④

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                                             焼き畑に種をまく

「残念ながら現在のタイの社会では、
山地民は、
『貧しくて不潔だ』、
『焼畑などで、自然を破壊している』
などと、馬鹿にされています。

最近では、ペッブリー県のカレン族の村が、
国立森林保護地区に不法に滞在しているという理由で
森林局員らによって、
家や(竹で作った質素な家だが、それでも立派な彼らの家)
大切な米を保存する米蔵を焼き払われる事件がありました。
(ミャンマーとの国境を越えて逃れてくるカレン族難民がいて、不法にタイの森林保護区に侵入している、というのが政府側の意見)

私達の村も、今は居住が許されていますが、
同じように森林保護区内にあり、
ここに住むことは、実は違法です。
私達の村は、ここでの居住権を主張するだけの力があったので、
今は政府が認めていますが、
もし、自分達の権利を政府に対して主張する力がなければ、
この村も焼き払われていたかもしれません。

村は法律ができるより、遥か昔からここにあり、
この辺りに豊かな森が残っているのも、
私達の祖先が大事に手入れをしてきたからこそなのですが…」


スエさんは、村で制作したノンタオ村の地図を見せてくれた。

それを見ると、どこが農業用地で、どこの森林が利用可能なのか、
そして、どこが伐採を禁止した保護区域かが
一目でわかるように色分けされている。
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            指さしているところがコーヒーが植えられた森。その上の縦縞の森は保護区


よく山地民の農業について問題視されることに、
山の斜面を焼いて畑にする焼き畑農法があるが、
一般的に、無秩序な森林伐採が行われ、
環境破壊を引き起こしていると思われているようだ。


しかし、実際、村の焼き畑は、
もっと森の環境に配慮したものである。

例えば、大きな木は腰の高さくらいに切り、そのまま残す。
そうすることにより、
その木は数年で元の大きさぐらいに成長し、
森は再生する。

また、焼き畑は、村で定めている利用可能な森林内だけで行われ
その他の森は、伐採されることはない。


焼畑によって山火事が起き、
広範囲に森林が消失することも
非難を受ける原因のひとつであるが、
パガヨーの人々は、
畑を焼く前には、畑の回りに野火止めをして
飛び火を防いでいる。
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スエさんによると、
「村の焼畑の方法は、
できうる限り、森の生態系に負担がかからないよう、
使用するのは、わずか1年間です。
場所を移動しながら、5~7年かけて一巡りし、
最初の場所に戻った時には、
また、豊かな森に成長しているのです」ということだ。

一般に森を保護するというと、
手つかずの原生林を守ることだと思いがちだが、
実は、適度に人が手を入れることで
森に光が入る二次林(原生林が伐採や災害によって破壊された後、自然に、または人為的に再生した森林)
の方が、より生態系が豊かで、人にとっての恵みが多いという。 

焼畑で作った畑では、
米以外に50種類以上の作物や
野ネズミなどの小動物が獲れるし、
休閑の年数によって森の規模が異なるため、
そこで生息する動植物も異なり、
結果的に多様な生態系が維持されることになるのだ。

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                             豆、ハーブ、ナス、トマトなど、いろいろな野菜が収穫できる

そこには、森の再生する力を利用した、
人間が半永久的に森と暮らしていくための大きな知恵がある。
日本の「里山」にも共通する、手入れの思想なのである。



「タイの森林はイギリスの木材会社によって
約100年前から伐採が始まりました。
その後、国内での乱開発があり、
ついに森林面積が国土の約20%にまで減る深刻な状況になりました。

森林の分布を地図で見れば、一目瞭然なのですが、
現在タイに残る森林のほとんどの場所に、
パガヨーの村があります。
つまり、タイにかろうじて森林が残っているのは、
パガヨーが、昔から森を大切に守ってきたからなのです。

しかし、その事実を、ほとんどのタイ人は知りません。

後からできた森林保護の法律には、
初めから住んでいる私達パガヨーのことには
一言も触れられていないのです。

森と共に生きるパガヨーの生き方を、タイ人に知ってもらい
認めてもらうことは、私達の夢であり、活動の目標でもあります」
と、スエさんは淡々と語った。

都会の暮らしや考え方もよく知る、
若くて話上手な、この「なまけもののリーダー」が、
今後、シャイな村の青年を代表して果たす役割は大きいだろうと思った。


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                                  米蔵の下の水牛。大切な労働力



ノンタオ村では、今、20万本のコーヒーの苗を栽培している。
これらの苗は、スエさん達の取り組みに共感する、
他の村の人達に配られる予定である。

「最近は、パガヨーの暮らしも変化してきています。
教育費などの現金収入が必要になり、
中には、子供を大学にやるお金のために土地を売る者も出てきました。
森がなければ生きていけないパガヨーにとって、
これは深刻な問題です」
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スエさん達は、
街の人にコーヒーの木のオーナーになってもらう計画も考えている。

苗の植え付けや肥料作りなどの作業に参加してもらいながら
パカヨーの考え方を理解してもらうこと、
そして、苗の管理費用を負担してもらうことで、
コーヒーの生産を安定させ、
教育費など、村人に必要な現金収入にもつなげる、という主旨である。

もちろんオーナーは、
自分で収穫したコーヒーを飲む喜びが味わえる。
ぜひ、実現して欲しいプロジェクトだ。
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                                 森の中のコーヒーを収穫


「私達が求めているのは、
コーヒー栽培のみで生計を立てることではありません。
森の木を1本も切らずに育てている私達のコーヒーが、
街で飲まれることによって、
パガヨーの知恵や森と生きる暮らしを知ってもらう、
ひとつのきっかけになることを願っているのです」

スエさんは、昨年収穫したコーヒーを丁寧に淹れてくれた。
香り高い、ノンタオ村のコーヒー。
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スエさん達は、そのコーヒーに
パガヨー語で、「偉大なる山」という意味の、
「LAPATOラパト」という名前を付けた。
村人が霊山と崇めている
パーゲーム山の高い頂き
に見守られて育った森のコーヒー、
という意味である。

このコーヒーには、「なまけもの」を標榜するスエさん達が
村の将来をかけた、切実な想いが込められているのだ。

(おわり)


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ノンタオ村のオーガニック・コーヒー「LAPATO」では、
できるだけ美味しいコーヒーを飲んでもらうために、
基本的に注文を受けてから精製、焙煎しています。
去年、収穫した豆はすでに品切れですが、
今年収穫した豆は、5~6月から焙煎できる状態になるので、
興味がある人は予約も受け付けています。
【連絡先】hi.waw☆hotmail.com、osiwakorn☆yahoo.com (日本語可)(☆=@)


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by yunkao | 2012-01-29 14:39 | ちょっと遠くへ


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